おばあちゃんの花畑
RAIZO
25 3月 2008
花畑といっても、おばあちゃんの花畑は小さかった。
庭の隅っこ。一坪にも満たないスペースだった。
でも、その小さな場所には、四季を通じて色んな花があふれ咲いていた。
ふきのとうの花が咲いたかと思えば、
東京なのに北海道のスズランが花壇を覆うように咲くこともあった。
梅雨どきに咲く大きなシャクヤクの見事な花には、
濡れたらかわいそうと、
おばあちゃんは竹の支えに こうもり傘を くくりつけた。
道ゆく人は、誰もが「きれいねえ」と立ち止まっては声をあげた。
そのたびに おばあちゃんはニンマリして花たちに「ありがとうね」と言った。
花咲か爺さんならぬ、花咲か婆さん。
みんなは おばあちゃんを そう呼んでいた。
それにしても、なぜ こんなにも見事に花が咲くのか。
その秘密を おばあちゃんは ある日教えてくれた。
「秘密なんて何もないんだよ。花に いつも話しかけているだけだよ。」
そういえば、おばあちゃんは、いつも人間に話すような口調で花たちと会話している。「今日は暑いねえ。水をたくさんあげるからね。」とか
「明日は きっと綺麗な花が咲くんだろうね。」とか。
そんな おばあちゃんは近所に住む子供たちにも気さくに言葉をかける。
しかめっ面の子も、下を向いて歩いている子も、
おばあちゃんが話しかけると ニコッと微笑み言葉をかえす。
おばあちゃんの魔法。
花も人間も同じ言葉が通じてしまう、心をかよわす魔法。
おばあちゃんの花畑は もうないけれど
おばあちゃんの魔法は ずっと心に生きている。
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