クイックガイド

標識装着日記

ホエル・G・オルテガ=オルティス、海洋哺乳類研究所

loveearth.comの「トラッキング」で観測できるザトウクジラの動き。クジラに標識を装着した南極探検隊のリーダーこそが、海洋哺乳類研究所 (MMI) のホエル・G・オルテガ-オルティス。いかにして6頭のクジラに標識を取り付けたのか? 遠征日記を公開します。

2007年2月12日

この日MMI の同僚のクレイグ・ヘイスリップと私はアルゼンチンのウシュアイアを出発。目的は、南極半島西部一帯でザトウクジラの移動パターンの調査をすること。そして衛星監視無線標識を12頭のザトウクジラに取り付け、トラッキングによって彼らが晩夏にどこでエサを食べているのか、捕食海域を特定し、彼らが冬季を過ごす海域への移動ルートを特定することでした。

ウシュアイアで観光船エクスプローラー号に乗り込み、私達は機材の入った4つの箱と南極での防寒対策用品を持ち込んで、南極大陸に渡りました。エクスプローラー号はGAPアドヴェンチャーという企業が運航するクルーズ船で、科学調査への貢献として、私たちを無料で運んでくれました。(私達の探検の後、エクスプローラー号は 、氷山に激突し沈没してしまいました。)移動の最中、クレイグと私は共にクルーズ船の乗客に向かって私達の調査について講演し、今回の探検での作業計画について話をしました。

この地図にはこの日記の中で言及している多くの地理的な特徴が示されています。

2007年2月16日
ウシュアイアを出発して南極半島までの旅は4日間。ドレーク海峡を横断中の天候コンディションは最高。ジェラルシュ海峡に到着後、エクスプローラー号に無線で探検帆船スピリット・オブ・シドニー号に連絡を取ってもらい、待ち合わせ場所を決めました。

私達は昼食のすぐ後にエレラ・チャンネルに到着しました。何人かの乗客が船を下りてダンコ島を観光する間、クレイグと私はスピリット・オブ・シドニー号の到着を待ちました。船が現れると、私達は機材を全長18メートルの、帆船に移しました。ここが今後数週間の私達の活動拠点となるのです。

クレイグと私を出迎えてくれたのはスピリット・オブ・シドニー号の船主かつ船長のキャス・ヒューとダレル・デイ、一等航海士のマグナス・デイ。キャスとダレルはスピリット・オブ・シドニー号上での作業を買って出てくれ、南極半島でクジラの調査を行えるよう、4週間の船のチャーターを無料で引き受けてくれたのです。

船上にはカナダ人研究者のチャールズ・ショート、フィリップ・ルジェ、そしてマイケル・ハンが乗っていました。2週間前に沿岸野生動物研究財団によるシャチの研究に参加した研究者たちで、我々と合流後、チームはザトウクジラ調査に集中することになりました。合計8名のチームは、これから3月初旬まで窮屈な空間で生活と活動を共にすることになります。

船はその夜、ジェラルシュ海峡のパラダイス・ハーバーに停泊し、私達はシフトを組んで、船を損傷しかねない海面の氷を交代で見張りました。

2007年2月17日
次の朝の起床は午前7時。クジラ調査初日に向けて準備です。最初の作業はRHIB(硬質船体膨張式ボート)の準備と点検。長さ6メートルの RHIBは出発地点のシュアイアで借りたもの。ペレグリン・アドベンチャーズという企業が運航する船上ツアーに使用されている、アカデミック・セルゲイ・バビロフ号で南極まで運ばれてきました。元学術調査船だったものです。
RHIB、燃料、物資、そして私達を、バビロフ号およびその姉妹船アカデミック・イオッフェ号が、全て無料で輸送してくれました。さらに、ダレル・デイとフィリップ・ルジェが、ウシュアイアで機材の積み込みを行うスケジュールや南極でスピリット・オブ・シドニー号と待ち合わせをするスケジュール設定に奔走してくれました。この調査プロジェクトは、スピリット・オブ・シドニー号、ペレグリン・アドベンチャーズ社、および GAPアドベンチャーズ社の後方支援なしには行うことができませんでした。

RHIB、その40馬力の船外モーター、船の先から約1メートル延びている船首に取り付けた木のプラットフォームの強度をテスト。標識を正しく取り付けるには、船の構造が非常に重要なのです。アンテナができる限り垂直でなくてはならないので、クジラのすぐ傍まで近づく必要があります。プラットフォームはウシュアイアで、チャーリーとフィル、マイクに作ってもらいましたが、RHIBで走行しながら二人分の体重を支えられるだけの強度があるかどうかを試さなくてはなりません。RHIBの試運転が終わり準備が整ったので、機材を積み込み、海上へ出てクジラを探すための準備を整えました。

午前半ばには、私達はRHIBに乗り、クジラを探しに出発しました。スピリット・オブ・シドニー号も錨を上げ後に続きました。
RHIBに乗り込んだ5名の標識装着チームの構成は次の通りです。

- 標識装着係(ホエル)
- 写真識別係(クレイグ)
- 皮膚生体組織検査サンプリング係(フィル)
- ビデオ撮影係(マイク)
- ボート運転係(チャーリー)。

私達は南極のアンドボード・ベイでクジラを数頭発見し、標識を装着するために接近しましたが、まったく標識を装着できませんでした。RHIBに乗ってから7時間後、私達はスピリット・オブ・シドニー号と合流するために戻りました。RHIBは5名乗るとあまりにもスピードが出ない。今後の標識装着活動ではチームを4名に削り、ビデオ撮影はしないことにしました。

2007年2月18日
早朝にRHIBに乗ってアンドボート・ベイに入り、エレラ・チャンネルの南端で2頭のクジラに遭遇。この2頭はおそらく母クジラと生後1年経った子クジラのようです。14:21グリニッジ標準時に私達は最初の標識を母クジラに取り付けました。

この日、別のクジラのグループを発見し、接近してみましたが、標識の取り付けには失敗。RHIBに乗り込んで約8時間後、私達はクーバービル島に向かい、そこでスピリット・オブ・シドニー号は一晩停泊しました。

2007年2月19日
私達はエレラ・チャンネルの北端でクジラを探しましたが、この海域ではクジラは1頭も発見できず、そこでジェラルシュ海峡へ向かい、2頭のクジラに標識を装着しました。ひとつは13:07グリニッジ標準時に2頭の成長したクジラを発見し、そのうちの1頭に標識を装着。続いて20:50グリニッジ標準時に母と子の2頭のクジラに遭遇し、母クジラに標識を装着したのです。

その後、ヒューズ湾に向かって北に進み、そこでいくつかのザトウクジラのグループがオキアミを捕るために「泡の網法」(捕食行動)を行っているところを目撃しました。22:04 グリニッジ標準時に4頭の大人のクジラのグループに近づき、そのうちの1頭に標識を装着しました。22:25には2頭の成長したクジラに近づき、その日4個目の標識を装着しました。

RHIBに乗ってから10時間以上たった後、ジェラルシュ海峡を航行してシエルバ・コーブに向かいました。私達が到着したとき、スピリット・オブ・シドニー号は氷山に囲まれた狭い場所に錨を下ろすために位置を定めているところでした。風が強くなり、海面に漂う氷のいくつかが接近し、帆船はまさに危険な状態。海岸線にロープを結び、スピリット・オブ・シドニー号を固定したものの、迫ってくる氷を見張る必要がありそうです。誰が夜間の氷見張り番を務めるか…それを、さいころを振って決めました。

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